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小雨が降り止まない。 小さな雨の矢が罪で失われた心中の空洞に刺さっては冷たい水が胸を満たす。冷えた身体が凍えて震えて。 雨なんか嫌いだ。 ふわりと覆い被さるあなたの温もりがこんなにも優しいなんて。 雨なんか嫌いだ。 偽者みたいな温もりは真実の罪に震える身体に否応もなく呑みこまれてしまうから。 あなた自身を取り込んでしまいそうで。 「あ、またストレートで」 「てめ、少しゃ手加減しろっ」 「すみません」 謝ることなんて簡単なのに。 「…あー、まあ、勝負の世界は厳しいんだしな」 繕うように優しくなんかしないで。 勝つことになど意味はないのに。 「コーヒー、淹れますか」 「ああ」 「いい豆が手に入ったんです」 「ああ」 「ねえ、悟浄?」 「ああ」 「抱いても、いいですか?」 「…ああ」 だから、雨なんか嫌いだ。 |
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