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 自然と視線がこいつに向く。
 階段の下での擦れ違いざまほのかに感じる体温とか、車の中での風に揺れる黒髪、あるいは湖水のように綺麗な緑の目だったり。
 気づけば視線のすべてがこいつを追っている。
 意識のすべてがあいつに向いている。
 簡単なことだ。
 こいつも、見られていると、気づいているのだろう。だから避けて。
「なんで避けんの」
「なんで見るんですか」
 でも、目を逸らすと視線が追ってくるから。
「じゃあなんで見んの」
「じゃあなんで避けるんですか」
 言葉遊びのようだ。そう、遊びにできればいいのに。でもこれは遊びじゃない。
 笑い飛ばしてしまえるほど滑稽な、真剣勝負。
「言えよ」
「言ってくださいよ」
 理由なんて簡単だから。
 言葉に出さずに心中呟く。たぶん、お互いに。
 好きなんだ、って。
 似たもの同士。
 ただ負けを認めるのが、悔しいだけだ。

027無意識とは(20041009)
名前が出ていないけど、八と浄です。
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