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自然と視線がこいつに向く。 階段の下での擦れ違いざまほのかに感じる体温とか、車の中での風に揺れる黒髪、あるいは湖水のように綺麗な緑の目だったり。 気づけば視線のすべてがこいつを追っている。 意識のすべてがあいつに向いている。 簡単なことだ。 こいつも、見られていると、気づいているのだろう。だから避けて。 「なんで避けんの」 「なんで見るんですか」 でも、目を逸らすと視線が追ってくるから。 「じゃあなんで見んの」 「じゃあなんで避けるんですか」 言葉遊びのようだ。そう、遊びにできればいいのに。でもこれは遊びじゃない。 笑い飛ばしてしまえるほど滑稽な、真剣勝負。 「言えよ」 「言ってくださいよ」 理由なんて簡単だから。 言葉に出さずに心中呟く。たぶん、お互いに。 好きなんだ、って。 似たもの同士。 ただ負けを認めるのが、悔しいだけだ。 |
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